客席の上に置いていた鞄と勘定を掴み、レジへ向かった。

レジの山口様は、あたいを見てミステリアスそうな面構えをしたけど、あのPCを未だに見ていないせいか、何も言わずに勘定を受け取ってくれた。

 よかった。ばれていない。

 あたいがPCを壊してしまったことに、まだ誰も気付いていない。

 戯画喫茶の一気ドアが解くのと同時に、一目散に走って家に帰った。

 それから三太陽後、また戯画喫茶に来た。

 レジに立っているのは、今日も山口様。

 「禁煙の、WEB催し物でお願いします」

 亭主に訊ねられる前から、あたいは張りきって言った。

 あれから書斎へ赴き、調べた収益、どうもPCを壊してしまったわけではないということがわかった。

 WEBのやり方もマスターした。

 だけど念のために書斎で借りた教科書を持参した。

 持参した教科書は二冊。

 一冊は『小中学生のインターネットで審査教育』

 再び一冊は『康太と学ぼう! WEB』

 教科書に出てくる八歳くらいの男児、康太とともに学んだかいあって、順調に検索エンジンのウェブページまでたどり着けた。

 もはやおんなじウェブページをとりどり表示させることもない。

「……」

 たどり着けたはいいが、これといって調べたいことも、見たいウェブも薄いことに気付いた。

 ……あぁ、なんのために書斎まで行って調べたんだろう。

 そもそもなんで、読みたい戯画も調べたいこともないのに、戯画喫茶にいるんだろう。

 物悲しい気持ちになった。

 ……そう! 気を取り直して、あたいと同姓同名のユーザーを探してみよう。

 これは楽しそうですぞ。

 全国の悩める森千歳。

 その気がかりを一緒に分かち合おうじゃないか。

 検索エンジンに「森千歳」と打ち込むと、たくさんの森千歳が出てきた。

 初めに見たのは、図書の読者モデルをやる森千歳。

 出で立ち図書など、生まれてこういうかた買った部分の弱いあたいでさえ、聞いた部分のいる有名な図書。亭主はその図書の個々標本らしき。

 亭主の説明を見た。

 身長が……

 百七十三センチもあった。

 自分はPCの前に座りながら、制限を見上げた。

 ……あぁ、こういう制限汚れてる。最後にオーバーホールしたのって何時なんだろう。そもそも、制限オーバーホールって、どうして講じるのかなぁ。

 多少の放心ときの事後、亭主のトータルムービーを見た。

 身長とか、どっちみちうわさです。

 そんなのムービーを見ればひと眼で……

 わかった。亭主とあたいでは、腰に作戦をあてるターゲットが違うということがわかった。
リンリンの脱毛効果は抜群にいいですよ!

戯画喫茶のサクラ。それがわたしのビジネス。

今にもつぶれそうな寂れた戯画喫茶で、場内のふりをして戯画を掴む。そしてときおり楽しそうに笑う。

 ガラス越しに見た人たちは売り込めるように入暖簾し、暖簾はすぐ大隆盛。そういう標的で雇われてある。

 時給は三百八十円。月額は安っぽいけど、戯画は読み放題だし、飲料も呑み放題。これ程美味いバイトは他にない。

 だから今日も嬉々として、一気ドアの前に立つ。

 あぁ、楽しいなぁ。

 今日もおかしいバイトの入口です。

 一気ドアが開くと、右側にはレジカウンター。そこにはエプロンにネームプレートを付けた、山口奈津様が立っている。

 山口奈津様は、余裕栗色の毛を絶えず一本で束ねている小面構えの美人です。

 あたいは亭主に一礼をした。

 心でこう言って──

『おはようございます』

 すると亭主も一礼をしながら、笑顔で答えてくれた。

「いらっしゃいませ」

 ……あれ?

 いや、山口様、そこまで徹底しなくても……。

 山口様はレジ専門で、自分は場内のふりをやるサクラ専門。商いは違うけれど、おんなじ仕事場の友達ですことに変わりはない。お礼くらい普通に交わしても良さそうな方法なのに。

 でもまぁ、『仇を欺くには先ず味方から』って単語も起こる。

 あぁ、山口様は若いのにとことんしてるなぁ。

「お催し物はどうしてなさいますか」

 亭主が言った。

 またまたぁ。そんなこと訊かなくてもわかってるくせに。duoクレンジングバームは500円で試せれる!?